Oi, Hazure Sukiru da to Omowareteita “Chiito Koodo Soosa” ga Bakemono Sugiran da ga

Chapter 50: 50 Hey, that scream again.


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決闘当日。

王都。

バトルアリーナ会場には、すさまじいまでの観客が集まっていた。

「こりゃ……すごいな」

三万……いや、四万人はいるのではないか。

まあ剣聖リオンの目的が《汚名返上》であることを考えれば、これも道理だよな。なるべく多くの人に力の差を見せつけたいだろうし。

そして観客の多くが、剣聖候補の味方のようだった。

「ダドリー様! 頑張ってくださいー!」

「外れスキル野郎なんかに負けないでくださいー!」

「キャー! ダドリー様ぁー!」

「アリオスなんかぶっ飛ばしてー!」

……まあ、仕方ない。

ラスタール村の住人なら僕に理解を示してくれるけれど、まだ大多数の人が僕を腫れ物のように扱う。

この場で声援を求めるのが間違いだ。僕は、僕のできることをやるのみ。

「アリオスさぁーん! 負けないでー!」

「アリオス頑張れーっ!」

たまに聞こえる僕への声援は、カヤかレイあたりかな。ダドリーの応援をかき消すがごとくに叫んでいる。

その威勢の良さに苦笑を浮かべながら、僕は控え室を出て、会場に足を踏み入れるのだった。

会場から差し込む光が、妙に眩しかった。

「ようアリオス。一週間ぶりだな」

僕を出迎えたのは、あのとき《白銀の剣聖》スキルを授かった因縁の相手――ダドリー・クレイス。

あいつもそこそこ修行してきたようだな。

身体の周囲に白銀の煌めきを身にまとっており、剣聖っぽい雰囲気を放っている。見た目だけな。

内面の嫌らしさは相変わらず。

いまも僕を指さしながらニヤニヤ笑っている。

「クク。誉めてやるよ。惨敗がわかってる戦いに応じたことはな」

「キャー! ダドリー様!」

「そんなクズぶっ飛ばしてー!」

いまの発言のどこに魅力を感じたのか、女性陣が黄色い声をあげている。耳障りなことこの上ない。

ちらりと観客席に目を向けると、上座(かみざ)にあたる席にレイファー第一王子が腰掛けている。その隣には剣聖リオンもいるな。

レイはあそこにはいない。

ラスタール村の住人に紛れ込んで、あくまで一般人として応援するつもりのようだ。

「おい、無視か? なんか言えよクズ」

「…………」

なおも煽ってくるダドリーに、僕は呆れ半分に答える。

「余計な問答はいい。剣を持たば雑念は捨てよ――そうリオンから教わらなかったか」

「ふん……。面白くねえ奴」

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ダドリーは鼻を鳴らすと、つまらなそうに構えの体勢を取る。

あんな奴でも、一応は《白銀の剣聖》。

なかなかサマになっていることもあり、またしても観客たちが声援をあげる。

……さて、僕もいくか。

全意識を研ぎ澄ませて柄に手を添えると、ダドリーが「ぷぷぷっ」と笑った。

「なんだその構えは。おまえ、まさか最強のマクバ流をなにもかも忘れたのかよ?」

「……言ったろう。余計な問答はいらん」

「けっ、ここまでザコだと張り合いねぇな」

双方構えたところで、審判が片手をあげる。

「これより、ダドリー・クレイス、アリオス・マクバの決闘を始めたいと思います。準備はよろしいですか?」

その問いに、僕もダドリーもこくりと頷く。

一瞬の間。

そして。

「始めぇーーーーー!!」

かけ声と同時に、僕とダドリーは走り出す。

「マクバ流、一の型、神速ノ一閃!」

初手の攻撃はそれか。

なら僕も同じ技でぶつかるまでだ!

「淵源流、一の型――真・神速ノ一閃!」

「な……んだとッ!」

ダドリーが目を見開く。

その怯みが命取りだ。

〇・五秒後。

ダドリーが神速で剣を横薙ぎに切り払う。

たしかにさすがのスピードだ。

だが、同じくマクバ流を習った者として、その動きは熟知している。

〇・七秒後。

王国最強の剣技を繰り出すダドリーを、さらに上回る速度で僕は剣を振るう。下方からの振り上げ攻撃だ。

「な、ちょ――っ! ウボァァァァァア!!!」

ダドリーはまたしても奇妙な悲鳴をあげながら、空高く吹き飛ばされていった。

「……え?」

「……へ?」

「……屁?」

さっきまでダドリーを応援していた観客たちが、急に静まりかえる。

「ば、馬鹿なっ……!」

そのなかにおいて、急に椅子から立ち上がる者がいた。

「う、嘘だろう……? あの動き、まさか、まさかッ……!!!」

あの剣聖リオンが、激しく動揺していた。

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