Oi, Hazure Sukiru da to Omowareteita “Chiito Koodo Soosa” ga Bakemono Sugiran da ga

Chapter 90: 90 Hey, don't be convinced.


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「っと……?」

ふと僕は自身を見下ろす。

――透けてきているな。

ジャックとの戦闘前よりも、格段に身体の濃度が下がっている。

そういえば、微妙に意識もぼんやりするな。うまく表現できないけれど、意識そのものが別次元に戻されそうな感覚である。

「時間切れか……」

本当はもっと近辺を探索してみたかったんだけどな。

アルセウス救済党――すなわち国内屈指のテロ組織は、あろうことか王城に拠点を構えていた。

組織の諸々を知るためにも、できれば潜入しておきたかったんだが。

「ま、仕方ないか……」

拠点を知れただけでも良しとしよう。国が総出をあげても見つからなかったようだからな。

「アリオス……化け物め……」

そう言いながら気を失うジャックを確認し、僕の意識はぷつりと途切れた。



「……っと」

そして再び覚醒したとき、僕は見覚えのある場所に佇んでいた。

大物領主、ユーフェアス・アルド。

その屋敷内だ。

「アリオス!!」

「わわっ!」

ふいに抱きついてくるのは幼馴染みのお姫様――レイミラ・リィ・アルセウスだ。

毎度のことながら、感触がやばすぎるんですが。

「お、おい! 急になにを……!」

「心配したの!! いきなりピクリとも動かなくなって……!」

「ピクリとも……?」

そうか。

僕の意識が王城にあった間、肉体は置いてけぼりだったからな。

ジャックは肉体にも意識があったようだけど、僕はさっき初めて思念体を飛ばしたばかり。

いろいろと慣れとか必要なのかもしれないな。知らんけど。

「おい、大丈夫さ。心配するな」

「だ、だって……」

そう言ってうるうるとした瞳で見上げてくるお姫様。

可愛い……と言いかけたのを、すんでのところで我慢する。

「はあ、本当にあの子は……」

「むー……」

諦観したように呟くカヤと、ちょっと寂しそうに親指を噛むエム。

「イヤー、モテモテデスネ! アリオス様!!」

そんな妙なテンションで突っかかってくるのは、僕の眷属たる古代平気――ウィーンだ。

「モテル男ハ違ウネ! ヨッ、アルセウス一(いち)!」

うっざ。

僕は古代兵器の頭部っぽい箇所にチョップをかます。

「スミマセン調子乗リマシタ二度トヤリマセン」

「まあ、別にそんな怒ってないけどさ。……そんなことより、ジャックの思念体はどうした? いないみたいだが」

「ジャックナラ消エマシタ。アリオス様ノ意識ガ飛バサレタノト同時二」

「おまえは……」

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ふざけているようで、さすが抜け目ないな。

僕の意識が飛んでいたことをしっかり把握している。

このあたりは古代兵器のなせる技ってところかな。

「ま、なにはともあれ、これで安心できるか……」

ジャックは肉体と思念体とで意識を切り離せていたが、それでも僕との戦闘ではそこまでの余裕がなかったのかもな。

「意識が飛ばされた……? アリオス、どういうこと……?」

なおも抱きついたまま問いかけてくるレイに、僕は真顔で答える。

「さっきまでジャックと戦ってたんだ。意識上で」

「意識上で!?」

「ついに剣も魔法も使わずに勝利するように!?」

みんなから総ツッコミが入った。

んー、どう説明すればいいのか。

ちょっと難しいな。

「……まあ、わかりやすく言えば、《原理破壊》のスキルでジャックのいる場所に転移したってことさ」

「…………」

お互いに目を見合わす一同。

「いまの説明で理解できた……?」

「いえ、全然……」

「もはや人間を辞めてるね……」

おい、好き放題言われてるんだが。

僕だって王城に行けたのは一か八かの試しだったしね。

本当に転移できるとは思わなかった。

だからこそ説明が難しいってのもある。

「こほん」

僕は咳払いをかますと、話題を無理やり元に戻した。

「ふざけてる場合じゃないんだ。ジャックは無事倒せたが……思いもよらないことが判明してね」

そこで僕は、アルセウス救済党の拠点が王城であったことをみんなに告白した。

そして、多くの人造人間(ホムンクルス)が存在していたこと。

奴らの目的が、党名通りアルセウス王国の救済にあること。

それらの事実を、僕は包み隠さず伝えた。ここにいるメンバーはみんな信用できるからね。

「そう……王城に……」

一番衝撃を受けていたのは、やはり王族たるレイミラだ。

「レイファー兄様……本当に、なんてことを……」

「本当にひどい連中です……!!」

エムも憤懣(ふんまん)やるかたないといった様子だ。

そりゃそうだよな。

まだ全容はわかっていないけれど、エムは奴らのいう救済のために生み出されたのだから。

「どうやら、思った以上に大きな事件になりそうね……」

ため息混じりに呟いたカヤに、レイはやや気落ちしながらも明るい表情で言った。

「でも大丈夫よ。たしかに闇の深そうな事件だけど……アリオスがいるもの」

「ふふ、それもそうね」

「圧倒的ナ安心感デスネ」

おい、そこで納得するな。

――ともあれ、こんなところで長話はできない。

かくして、僕たちはいったん撤収することにしたのだった。

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