「どういうことだ?あれはガイウスの本当の実力ではないと?」
カルラがギョッとした顔をして、アウグロスに問い質した。
アウグロスは溜息混じりに首を横に振ると、仕方ないといった表情を浮かべて言ったのだった。
「そうだ。彼の本来の力はあんなものではない。あれはあくまでフラットな状態での力なのだからな」
「フラットな状態?それはどういう意味なのだ?」
カルラが慌て気味に問うと、アウグロスが右手を顎の下に置いて考え込んだ。
「……そうだな。説明するのは少し難しいのだが……あの無意識の状態というのは、言ってみれば彼にとってはゼロ状態なのだ」
「……ゼロ状態……わたしには言っている意味が判らないが?」
「そうか、難しいか……つまり彼の意識がある状態とは、ゼロ状態にすら辿り着かないマイナス状態ということなのだが……」
「マイナス状態?これまでのガイウスの状態が?意識のあった時はすべてマイナス状態だったと?」
「そうだ。意識を失って始めてゼロ状態まで戻ったということさ」
カルラはデルキアたちと顔を見合わせて驚いた。
だがアウグロスはそんな彼女たちを尻目に、ガイウスに関する説明を続けた。
「つまりは彼の意識がある時には、或る種の足枷が掛けられているために、ゼロより下のマイナス状態だったというわけさ」
するとカルラたちが、皆一様に驚きの表情を浮かべた。
そして三人を代表するかのようにカルラが呟いたのであった。
「……そういうことか……足枷とは……記憶に掛けられた鍵のことだな?」
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するとアウグロスが、意外にもゆっくりとした動作で首を横に振った。
「いや、それも一つの足枷ではあるが、もっと直接的なものもある」
「直接的な?それはどういう……」
アウグロスは笑みを浮かべ、静かな口調で言ったのだった。
「そのままさ。能力そのものに制限が掛けられているのさ」
「どういうことだ?制限が掛けられているとは……一体どのように……」
「無意識時の彼のオーラを見ただろう?あれを彼の意識がある時に見たことは?」
「……ないかな……」
「そうだろう。あのオーラを普段は封じられているのさ」
「……そういうことか……」
「そうだ。あのオーラを放出しつつ、無限の魔法総量でもって繰り出す魔法の威力たるや……想像してみるが良い」
するとようやくカルラが納得の表情を浮かべた。
「そうか。オーラと魔法は別物。どちらか一方ではなく、同時に……」
するとアウグロスの笑みが深まった。
「そうだ。それこそが本来のガイウス・シュナイダーの実力なのだ。それに……」
アウグロスはそこで、勿体ぶるように言葉をわざわざ区切るのであった。
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