カリンの表情と言葉に、ガイウスの身体がぶるっと震えた。
「……え~と~……それは一体どういう意味で?……」
ガイウスがなんとか絞り出すように問いかけると、カリンがニコッと可愛らしくも不気味に笑った。
「意味も何もないわ。そのままの意味よ」
「……え~と~そのままの意味っていうのがわからないんですけど……」
ガイウスが重ねて問うも、カリンはニコッと微笑むだけで答えようとはしなかった。
「……え~と~、そのう~……」
カリンの微笑みにびびり倒したガイウスが言葉をあぐねていると、カルラが助け舟を出すかの如く口を挟んだ。
「まあ、その辺にしてやれ。ガイウスも多少はお前の怖さが判ったようだしな」
するとようやくカリンが言葉を発した。
「そうね。じゃあこの辺にしましょ」
カリンは再び可愛らしい笑顔でそう言うと、スタスタと先を歩いて行った。
残されたガイウスは、カリンの笑顔がこれまでの可愛らしいものとは思えず、とても恐ろしいものに感じて動けなかった。
そしてガイウスは、カリンの醸し出すそこはかとない恐ろしさに、再び身体を震わせたのだった。
するとそれを見てカルラが苦笑交じりに声を掛けた。
「お前、ずいぶんとカリンを甘く見ていたな?」
するとガイウスがあっさりと認めた。
「……うん。正直……」
「やはりそうか。だがようやくわかったようだな?あれの怖さが」
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「……そうだね。でも……」
ガイウスがカリンに対する恐れからか言い淀んだ。
だがカルラはうなずくことで、ガイウスに対して先を促したのだった。
「……もしかしてカリンってさっきの戦いだけじゃなく、今まで一度も俺の前じゃ本気を出していない?」
するとカルラがコクンと小首を垂れた。
「その通りだ。そしてそれは、デルキアも同じだ」
するとガイウスの目が少し大きくなった。
「……なるほどね。そうなのか……」
「ああ、そうだ。彼女らは怒りにまかせて本気を出したりはしない。そんなことをすればいざという時に力を発揮できないからな」
「……それはどういうこと?」
カルラの言葉の意味を計りかね、ガイウスが問いかけた。
するとカルラが首を軽く横に倒し、両手を腰に置きながら静かな口調で言ったのだった。
「彼女たちは何があろうと本気は出さない。出してしまうと力が減るからだ。つまりな、彼女たちは常に力を溜め込んでいるんだよ」
「……力を溜め込んでいる……」
「そうだ。長い年月を掛け、じっくりとじっくりと……な」
「それってもしかして……」
ガイウスが或る事に気付き、カルラに問うた。
するとカルラがニヤリと笑い、厳かな雰囲気を醸しながら言ったのだった。
「そうさ。彼女たちが本気を出すのは、来たるべき神との戦いの時なのさ」
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