「あら、そうね。そうだったわ。じゃあ簡単に言うわね?」
イオーヌは可愛らしいウインクをすると、シェスターに向き直って言ったのだった。
「ルキフェルにいわれたからよ」
シェスターは静かに問いかけた。
「ふむ、アルスたちを守れと?」
イオーヌは大きくかぶりを振った。
「いいえ、違うわ。ルキフェルはガイウス・シュナイダーを注視しろと言っただけよ」
「……そうか、それがなぜアルスたちを救うことに?」
「成り行きよ。ガイウス・シュナイダーが消えたという地下水路を調べにタルカへ行ったら、その関係者の彼らに出会ったのだから、本当に成り行きでしかないのよ」
「ふうむ……」
シェスターはそこで深く考え込んだ。
(……もしもイオーヌの言う成り行きが本当のことだとしたら、これもガイウス君の特異点としての力が発揮された結果なのだろうか?……)
「それで、アルスたちを救ってくれたのはわかったが、何故ここへ連れてきたのだ?」
「真っ直ぐにここへ来たわけじゃないわ。色々なところへ跳んでは追いつかれ、また跳んでは追いつかれで、最終的にここへ来たのよ」
「そんなに追ってきたのか?異世界に跳んだというのにか?」
するとイオーヌが首を横に大きく振った。
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「違うわ。わたしは異世界には跳んでいないわ。異空間を利用して跳んだだけで、現われるのはこの現世よ」
「異空間に跳んだわけじゃないのか……」
「そうよ。単に特殊な移動手段として、異空間を利用しただけ」
シェスターは難しい顔となって、必死にイオーヌの話を理解しようとした。
「つまり、異空間には長い間とどまれないということか?」
「そうね。わたしたちの力だと、道としては使えるけど、その時間も限られているの。だからあまり遠くへは跳べないってわけ。だからだと思うわ、あの怪物の残滓が追ってこれた理由は」
「ふむ、だが何故ここなら大丈夫なのだ?どうしてここへは追ってこられなかったんだろうか?」
「それは簡単よ。ルキフェルに結界を張ってもらったのよ」
「ふむ……カルビン卿は、元々ルキフェルとはお知り合いなので?」
シェスターはカルビンへと向き直って問うた。
カルビンは鷹揚にうなずき、言った。
「ああ、古い付き合いだ。そうだな……二十年くらいだろうかと思う」
「ほう、二十年ですか。中々に古いお付き合いですな?頻繁にお会いになるのですか?」
「いや、数年に一回といったところだな。今回会った時も、五年ぶりくらいだったかと思う」
カルビンは思い出しながら話し、話し終えるやシェスターに向かってニヤリと微笑むのであった。
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