1
「……よし、終わり……」
ガイウスがそう呟くと同時に、瓦礫が静かに置かれた。
そこにはうずたかく積まれた瓦礫の山が出来上がっていた。
「ふん、まあいいだろう。これで覚えたね?」
カルラがとりあえず合格点を与えた。
ガイウスはうっすらと浮かぶ額の汗を拭いつつ言った。
「なんとか。これで片付けが出来そうだよ」
「そうかい。じゃあとっととやるんだね」
「えっ!今から?」
ガイウスが驚きの余り頓狂な声で言った。
カルラはそれを冷たくあしらった。
「当たり前だ。こういうのは憶えたての時に一気にやるのが一番さ。ほれ、さっさと行きな。サボるんじゃないよ。後で確認に行くからね」
カルラはそう言うとクルッと踵を返して、邸の中へと消えていった。
ガイウスはピクピクと頬を引き攣らせた。
「……ひどい……もうすでに五時間くらい練習しているのに……」
既に日は地平線の近くまで落ち、空が赤く染まり上がる中、ピクピクと身体を震わせ黄昏れるガイウスであった。
2
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「仕方がない。始めるとするか。どうせサボったら後でとんでもない特訓が待ち受けているに決まっているんだ。さっさとやって、風呂に入るに限るさ」
ガイウスはぶつくさと文句を垂れると、大きく深呼吸をして資料部屋を見回した。
「とりあえず中央の一番大きな瓦礫を外に出すか……これを先にやっとかないと、後回しにすると、後で力が尽きるかもしれないしな」
ガイウスはかつては天井であったと思われる、部屋の中央に横たわる一番大きな瓦礫をギッと睨み付けた。
そしてゆっくりと目を細めて意識を集中させ始めた。
「……ん……掴んだ。いけるぞ」
ガイウスが小声でささやくように言うと、巨大な瓦礫がゆっくりとフワッと浮き上がった。
そしておよそ一Mほど浮き上がったところで、今は崩れて大きく空いているかつて外壁があった方向に向かって瓦礫が静かに横滑りしはじめた。
「よし。良い感じ」
ガイウスは少しずつスピードを上げて瓦礫を邸の外へと出すと、三M程離れたところでゆっくりと降ろした。
「出来た。じゃあ次だ」
ガイウスはそう言って次々に瓦礫を中庭へと運び、見る見るうちにその下にあった資料や床が見えてきた。
「だいぶ片付いたな。あと少しだ」
ガイウスがあらためて気合いを入れ直し、また別の瓦礫に取りかかろうとした矢先、またも重低音が鳴り響き始めた。
ガイウスは思わず顔を上げた。
「……またぞろ空振りになるんじゃないのか?こうなるとほとんど狼少年だな……」
ガイウスはそう言いつつも、仕方なさげな表情をしながらゆっくりと上空へと飛び上がるのであった。
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