「何だと?ここにはいないだと?嘘をつけ」
ガイウスが低くくぐもった声で言った。
するとイリスがガイウスの言葉の語尾を大いに笑った。
「馬鹿かお前は。なぜこのわたくしがお前如きに嘘を吐かねばならんのだ」
「何を言っていやがる。お前、ユリアを攫う時に嘘を吐いたじゃないか」
「ほう、そうだったか?覚えていないな」
「ふん、この嘘つきの女狐が!」
するとイリスが高らかに笑った。
ガイウスはイラッとした表情を見せ、さらに詰め寄った。
「何でユリアはここに居ないんだ?なら何でお前はここに居る?」
ガイウスの問いに、イリスがあごをクイッと上げ、傲然とした表情でもって言い放った。
「わたくしがここにいる理由を何故お前如きに言わねばならぬのだ?そんな義務はわたくしにはないわ」
するとガイウスが口の端をクイッと上げた。
「そうかい。じゃあ自分で考えるか……そうだな、じゃあユリアがいるのは……お前の新しい城なのかな?」
ガイウスがわざとらしく芝居口調で言った。
するとみるみるイリスの顔が変わった。
「……何故それをお前が知っている?……」
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ガイウスは肩をすぼめ、またも芝居調に言ったのだった。
「さあて、なんでだったかな?よく覚えていないなあ~」
イリスは歯噛みしてガイウスを睨みつけた。
そして、ある考えに思い至り、イリスは苦々しげに言ったのだった。
「そうか……エルの奴だな?あの馬鹿者め……」
するとイリスが突如として自らが発していたオーラを収めた。
「ふん、まあいい。それならばそれで……」
オーラを収め静かになったイリスにガイウスは驚き、と同時に自らもオーラの放出を止めた。
「どうしたイリス?それならそれでって何の話しだ?」
ガイウスの問いに、イリスは答えなかった。
そして、ただつまらなそうな表情でもってため息を吐いたのだった。
ガイウスは予想外な展開に戸惑った。
「何だよ?どうしたってんだ?やるならやろうぜ」
だがそんなガイウスの挑発の言葉にも耳を貸さず、イリスは備え付けのソファーにどっかと座り込んでしまったのだった。
ガイウスは真剣に戸惑い、キョロキョロと視線をさまよわせた。
そしてガイウスはどうしたらいいか困った挙げ句に、イリスの向いにある木製の棚の上に仕方なしに腰掛けたのだった。
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