イリスがスーッと目を細めた。
「ほう。そうなのか?」
アスタロトは自信たっぷりにうなずいた。
「ああ。間違いないよ」
イリスはさも楽しげに皮肉な笑みを浮かべながらアスタロトの言葉を噛み締めた。
「ほう……そうか。それは面白いな」
「面白いかい?」
「ああ。実に面白いな」
「何が面白いんだい?」
重ねて問うアスタロトに、イリスは快活な笑みを浮かべて言ったのだった。
「人間界に興味が出てきた。これまでわたくしは、正直人間界には何の興味も抱いたことはなかった。だが、お前の話が本当だとするなら、これは面白い。実に面白い……」
イリスはそう言って何度も小刻みにうなずいた。
「そうか。興味を持ったか。ではここが片付いたら人間界を覗いてみるかね?」
するとイリスがアスタロトの話しに乗って来た。
「ああ。それはいいな。是非お前の案内で人間界の悪人共とやらを確認してみよう」
「そうか。わかった。ではそろそろここでのことを片付けるか?」
「そうだな。千年竜の居場所はわかっているんだったな?」
「ああ、先程のドラゴンに聞いたからね」
「で、それは何処だ?」
イリスの問いに、アスタロトが右手の人差し指を天に向けた。
イリスはいぶかしそうに眉根を寄せた。
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「何だそれは?この上空にいるとでも言うのか?」
するとアスタロトがこれに大きくうなずいた。
「ああ、どうやらそうらしいよ」
「ちょっと待て。この上に何があるのだ?空しか見えんが……」
するとアスタロトが朗らかに笑った。
「ああ、わたしにも空しか見えない。だがあるらしい」
「あるらしいとは?」
アスタロトはたっぷりと間を置き、意味深な表情をして言ったのだった。
「千年竜の住処だよ」
「千年竜の住処だと?何だそれは?それはこのガルダン大陸ではないのか?」
「どうもそうではないらしい。このガルダン大陸はドラゴンたちの住処ではあるが、千年竜の住処ではないんだそうだ」
イリスは眉根を大いに寄せていぶかしんだ。
「……で、その住処とやらはこの上空にあるんだな?」
「ああ。天界から覗いてみたことはないかね?」
するとイリスが即座に首を横に振った。
「ない。そもそもわたくしは下界に興味がないからな」
「そうだったね」
「お前もドラゴンに聞くまでは知らなかったのか?」
するとアスタロトは真顔となって答えたのだった。
「ああ、知らなかったよ」
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