「ほう……ここが天界か」
ネルヴァは天界の広大無辺な景色に、感心したかのように呟いた。
そして、さらに周囲を物珍しそうに見回した。
するとイリスが何やら自慢げな笑みを浮かべながら、得意げに言った。
「ほう、ずいぶんと興味を持っているようだな?そんなに珍しい景色か?」
だがネルヴァはイリスを無視して景色を見続けた。
そのため、イリスがムッとした表情を見せた。
アスタロトは苦笑を浮かべ、これ以上イリスの機嫌を損ねないように両者の間の溝を埋めるようとするかのように言った。
「ネルヴァは相当にこの景色が気に入ったようだ。イリス、嬉しいことなんじゃないかな?」
だがイリスは依然憮然とした表情を浮かべていた。
そのためアスタロトはさらに言葉を続けた。
「わたしも素晴らしい景色だと思うよ。思わず息を呑んでしまうよ」
「ふん、それほどではないと思うがな」
イリスは素っ気なさそうに言いながらも、まんざらでもない顔となった。
アスタロトはそれを感じ取ったものの、それを顔には出さなかった。
「いや、相当に素晴らしいよ。少なくとも地獄にはないね」
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すると、イリスが少しだけ興味を持ったように顔を前にスッと出した。
「そうなのか?地獄にはこのような風光明媚なところはないのか?」
イリスが自ら風光明媚と自画自賛したことで、アスタロトは思わず吹き出しそうになったものの、それを必死にこらえて言った。
「ああ。ないね。これほどの景色はね」
「ほう、そうか。ならばたっぷりと楽しむがいい」
アスタロトは満面に笑みを浮かべた。
「ああ、そうさせてもらおう」
そうして、アスタロトはネルヴァの横に並び立ち、たっぷりと景色を楽しんだのであった。
二人はしばらくの間、満足げに悦に入るイリスをよそに、景色を見続けたものの、十分ほども経つと、ようやくネルヴァが言葉を発したのであった。
「……やはりこの景色には見覚えがあるようだ……」
思わぬ発言に、アスタロトが驚きの表情を浮かべた。
「え?では君は、ここに以前来たことがあると?」
ネルヴァはゆっくりと、だが確かにはっきりとうなずいたのであった。
「……ああ、記憶の片隅にではあるが、確かに我はここに来たことがあるようだ……」
ネルヴァはそう言うと、再び周囲を見回した。
そして、なにやら懐かしげな笑みを浮かべるのであった。
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