「……やはり何もないようだな……」
ネルヴァは漆黒の壁を右手の掌で静かにさすりながら、さも無感動に言った。
すると、伽藍堂の室内では思いの外声が反響し、部屋の反対側にいたアスタロトに充分聞こえた。
アスタロトも漆黒の壁に手をやり、こちらは苦渋の表情を浮かべて言ったのだった。
「……そうだな……」
アスタロトはそう言うと、忌々しげに天井を見上げて呟いたのだった。
「この部屋には何かあるはずだと思ったのだがな……」
するとネルヴァがコツコツと固い靴音を響かせながら、アスタロトの元へと近づいてきた。
「見るからに曰くありげな部屋だからな。だが残念ながらただの空き部屋だったようだ」
ネルヴァの声は低くくぐもった声質ながら、伽藍堂の室内では良く響いた。
アスタロトはその声を腹立たしげなものとして聞くも、これ以上ここで粘ったところで埒が明かないと思い、諦めることとした。
「仕方が無い。他の部屋を当たることとしよう」
弱々しげにアスタロトは言った。
するとそれをネルヴァが笑った。
「ずいぶんと気落ちしているようだな?」
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だがアスタロトは、ここは特に腹を立てることはなかった。
「ああ、ガイウスを早いところ復活させてあげたいものでね」
するとネルヴァが皮肉な笑みを口元に浮かべた。
「ほう、ガイウス・シュナイダーか。だが本当にそれがお前の主たる目的なのか?」
意味ありげに笑うネルヴァに、アスタロトが据えたような目で睨みつけた。
「……何が言いたい?……」
ネルヴァは皮肉な笑みを口元に湛えたまま言った。
「お前の主たる目的は別にあるんじゃないかと思ったのでな」
アスタロトは極力感情を抑えようとするかのように、深く大きなため息を吐いた。
そして改めてネルヴァを鋭い眼差しでもって睨みつけつつ、言ったのであった。
「わたしの目的は我が友ガイウス・シュナイダーを復活させることだ。それ以外には何もない」
アスタロトは力強く言い切ると、ネルヴァをさらに強く睨みつけた。
ネルヴァはその視線を真正面から受け止めつつ、皮肉な笑みをさらに深くして言ったのであった。
「そうではあるまい?お前の主たる目的は実のところ、ルキフェルにあるのではないかな?」
ネルヴァは確信を持ってそう言うと、睨むアスタロトを逆に睨み付けるのであった。
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