ナーガの背に跨り地底に向かっていた一行であったが、洞穴を入って一時間も経つとガイウスが疲れを見せ始めた。
「もう疲れおったのか。情けないのう~」
エルの嘲笑にガイウスは勢い込んで反論した。
「仕方ないだろ!身体は十二歳児のものなんだ。体力がないのは当然だよ!」
「まだたかだか三十分ではないか。いくら十二歳児でもバテるのが早いわい」
「い~や、十二歳児の中では体力はあるほうだね!」
「そうかのう~弱いと思うがのう~」
「い~や、強い方だね!」
「ふん。まあどっちでもええわい。どうせもうまもなく着きよるしのう」
「えっ!もうすぐ着くの?」
「あと十分くらいじゃろ。じゃからもうちょっと我慢せい」
「了解、ゴールが見えれば元気が出るよ」
ガイウスの顔は途端に明るいものとなった。
「よ~しあと十分、気合を入れて跨るぜ!」
「……まったく、どんな気合の入れ方じゃ……」
「ところでさ、地底世界のことだけど……もうちょっとなんか情報ちょうだいよ」
「うん?ナーガ族のことか?」
「それもそうだけど、地底世界そのものの情報というか……明かりはどうしているのかとかさ」
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「地底世界に明かりなぞないぞ。じゃからナーガ族は目が見えん。しゃべる器官もなければ目も退化しておるのでな」
「……じゃあ僕はどうするのさ?」
「わしと一緒におるときはわしが辺りを照らしてやる。そうでない時は自分でなんとかせい」
「えーーーーっ!ずっと魔法で照らし続けろってこと?面倒くさいよーそれ」
「面倒でもなんでも仕方がないじゃろ。それが嫌なら終始わしの側におれ」
「……わかった。出来るだけそうするよ」
「うむ。他に質問は?」
「うーん。そうだなあ、そう言われても地底世界がどんなところか想像も出来ないから質問も思いつかないんだよなあ~」
「なんじゃそれは。それではわしも答えようがないわい」
「まっ、行ってみればわかるか」
「まあそういうことじゃな。なに、おそらくお前さんは地底世界をいずれかの前世で一回は訪れたことがあるはずじゃ。じゃから行けばいろいろと思い出すことじゃろうて」
「……本当にそうなのかなあ……」
「悪魔に詳しいのならばお前さんは当然、前世で地獄へ行ったことがあるはずじゃ。ならば必ず地底世界を通過しているはずじゃからな」
「う~ん。まあそれも行ってみればわかることか……」
「うむ。どうせもうすぐ着くでな。楽しみにしているがいいわい」
エルはそう言うとにやりと微笑んだ。
ガイウスはなにか釈然としないものを感じつつも、もうまもなくその地底世界に到着するため、気分を押し殺してナーガの背に揺られるのであった。
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