ガイウスが朦朧とした頭を抱えながらゆっくりとその身を起こすと、そこは光に満ちた世界であった。
「……なんだ……この光は……」
ガイウスはいまだ意識が不確かなためか、しばらくの間ぼーっと暖かく柔らかな光のベールを身に纏いながら、ぼんやりとまどろんでいた。
「……ここ……どこだっけ?……」
ガイウスはゆっくりと右手でこめかみを挟んで揉みこみ、意識をはっきりさせようと試みた。
「……う~ん……だめだ……頭がぼーっとしてる……」
ガイウスはそう言うと、大きくかぶりを振って数度激しく瞬きをした。
するとようやく朦朧としていた意識がはっきりとしてきた。
そこでガイウスはゆっくりと立ち上がり、あらためて周囲を見回してみた。
「……なるほど……壁も床も調度品までもが全部真っ白だったのね……どうりでなにもないように見えたはずだ……」
ガイウスはこの純白に染まった部屋にまったく見覚えがなかった。
「……そもそも、なんで俺はこんなところに居るんだ……」
ガイウスはゆっくりと歩き、突き当たると右手をかざして壁に触れた。
「……これは大理石か?……」
ガイウスはその硬質な肌触りに覚えがあった。
「……柱も……床も……どうやら全て大理石でできているようだな……」
すると突然、後背から聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてきた。
「……ほう。どうやら気が付いたようじゃな……」
ガイウスはすぐさま振り向き、その声の主のなを叫んだ。
「エル!!無事だったのか!?」
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そこには、デルパ村で石のように硬直したはずのエルの元気な姿があった。
「……うむ。心配かけたようじゃな。すまん……」
「……いや、そんなことはいいよ。それより体は大丈夫なの?」
「大丈夫じゃ。ほれこの通りピンピンしておるわ」
エルはそう言うと、すっくと二本足で立ち上がり、ぴょんぴょんと数度跳ね跳んだ。
「そうか~それはよかった」
ガイウスは大きく息を吐いてほっとした表情を浮かべた。
「……ところで……ここはどこ?……なんでこんなところに居るの?」
するとエルは途端に渋面を作った。
「……うむ。それは……じきにわかるじゃろう……」
「うん?どういうこと?エルもこの場所に見覚えなく連れて来られたの?」
「いやそうではない。ここは見覚えないどころか、よ~く見知っておる場所じゃよ」
「……ならこの場所がどこなのかはわかるってことだよね?だったら教えてくれてもいいじゃないか。それともなに?教えられない理由でもあるっていうの?」
ガイウスが問い詰めると、エルはさらに渋面を濃くした。
「だから、それも含めてじきにわかると言うておろうが……相変わらずせっかちな奴じゃ」
「いやいやいやいや、知っていたら普通は教えるでしょ。なんで教えないんだよ?おかしいじゃないか!」
ガイウスは苛立ち、エルを激しく攻め立てた。
するとその時、向かい合って言い争う二人に対し、頭上から降り注ぐような涼やかな声が響いたのだった。
「……エル、教えてあげたらいいじゃないか……」
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