「神ね……まあ、あなたが神を信じるのはどうぞご勝手にといったところですが、ゴルコス将軍の死の真相が……というくだりに関しては聞き捨てなりませんな?」
シェスターは眼光鋭くレノンを睨みつけて言った。
するとレノンもまた、シェスターを返す刀で睨みつけた。
「ほう……何が聞き捨てならないと言うのですか?」
「決まっている。新たな死の真相などというものはない!あなた方の仰っていることは全て!ただのでっち上げに過ぎないのだから!」
「それこそ聞き捨てならないというべきものですよ。あなた方の仰っていることこそ、行き当たりばったりの戯言に過ぎないではありませんか」
「戯言ではない。我らはあらぬ嫌疑を貴様らによってかけられ、卑怯千万な手口でもって弁護士不在の状態で戦いを強いられているのだ!こちらが受身となるのは当然のことであり、それをもって行き当たりばったりというのは見当違いも甚だしい!」
「卑怯千万な手口とはこれまた聞き捨てなりませんね?これまで何度も出廷を拒否してきたのはあなた方でしょう?それを……」
「白々しいことを言うな!我らは出廷拒否などいまだかつて一度もしておらん!貴様らが薄汚い策略を巡らしたのではないか!」
「これはこれは……証拠でもあられるのか?」
「そんなものはない!」
「はっ!ならばこれは、明々白々なる名誉毀損ですな!」
「訴えたければ訴えれば良い!だがそれで困るのは貴様らだがな!」
「なぜわたくしたちが困るのですか?いい加減なことを言うものではありませんよ?」
「だから訴えたければ訴えろと言っている!」
するとここで、突如として甲高い木槌の音が法廷内に高らかに鳴り響いた。
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そして木槌に続いて裁判長の怒号が法廷内に轟いたのであった。
「静粛に!!両名ともに落ち着くように!!」
裁判長の制止により、二人は互いに静かに押し黙った。
裁判長はそれを確認すると左右に控える裁判官たちと話し始めた。
そして相談を終え、椅子にしっかりと座り直した裁判長は、自らの正面に立つ証人のアルスに向かって静かに語りかけたのだった。
「アルス証人への質問を続けます。検事側、弁護側双方ともに無闇に言い争うことのないようにお願いします。よろしいですね?」
裁判長は厳しい口調でそう告げると、双方に向かって威圧的に同意を求めるよう鋭い眼光で見据えた。
するとレノン、シェスターともにクイッと顎を軽く引き、恭順の意思を指し示したのであった。
裁判長はそれを見て深く頷くと、あらためて正面の証言台に立つアルスを見据えたのだった。
「では続けます。その埋もれていた記憶が真実のものだったとして、それはどのようなものだったのでしょうか?出来るだけ詳しく教えてください」
するとアルスは一度大きく息を吸い込み、心を落ち着かせるかのように肺腑に溜まった空気を静かにゆっくりと吐き出した。
そして意を決したような顔つきとなって静かに話し始めたのだった。
「それは……今もってなお思い出したくない記憶でした……」
「それはなぜですか?」
裁判長の問いにアルスは静かに答えた。
「それは……わたしが部下を殺してしまったという苦い記憶だったからに他なりません……」
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