「……なるほど、つまり暗殺者たちはコメット君の背中の入れ墨が浮き上がった状態で殺し、その皮を剥いで持ち去ろうとしたということか……」
シェスターが冷徹にそう言い切ると、コメットが声にならない小さな悲鳴を上げた。
「……ひ……ひぃ……」
するとバルトがいつの間にやらコメットの脇に立ち、そっとその肩を抱いて身体を支えた。
「……バ、バルト……」
「大丈夫にございます。何があろうともこのバルト、コメット様の大事なお身体には指一本たりとも触れさせませぬ!」
力強く言い切るバルトに、アジオが皮肉な笑みを浮かべて言った。
「……大事なお身体には……ね。それってまさか入れ墨のことじゃないよね?」
するとバルトが気色ばんだ。
「貴様何を言うか!言葉尻を捕らえて貶めるとは一体何事だ!恥をしるがいい!」
怒りに顔を紅潮させ、口角泡を飛ばして罵るバルトに、当のアジオは涼しい顔であった。
「……まあ、そう興奮しないでよ。こちらもあなたの正体については、ある程度のあたりはつけているものの、いまだ完全にそうとは確定できてないもんでね。まあ色々と探りを入れているっていうのが実情なんだよね。だからさあ、まあこれくらいは大目にみてくれないかなあ?」
そう言うとアジオは最近お定まりの肩をすくめるポーズを披露した。
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すると話しを先に進めたいシェスターが、またも両者の間に割って入った。
「なるほど。どうやら我らは三すくみの状態のようだな。だがそれはともかく、どうだろうバルトよ。君の気持ちは判らないでもないが、とりあえずアジオの話しを最後まで聞いてみるというのは?反論するもしないも、まずはアジオの話しを聞き終わってからにしようではないか」
するとバルトは致し方ないといった様子で一歩無言のまま引き下がった。
そのためアジオはほっと一息溜息を吐くと、説明を再開させるために改めて口を開くのであった。
「さて……では話しを元に戻りましょう……と、どこまで話しましたっけ?」
アジオが惚けた顔でそう言うと、すかさずシェスターが返答をした。
「入れ墨は死ぬと浮き上がった状態のまま皮膚に固定されるため、暗殺者たちは風呂場を狙ったのだというところまでだ」
するとアジオが手を叩いてシェスターを賞賛した。
「素晴らしい。そうです。そうです。そうでした。その後バルトと揉めちゃったんでしたね?すみません、思い出しましたよ。で……何を話せばいいものか……」
するとアジオが何を言おうか逡巡しているのを見て、シェスターが素早く切り込んだ。
「どうやら考えあぐねているようだな?ならばとりあえず君らの正体を教えてもらうということでどうだ?」
思いもかけぬ突然の攻撃にアジオがびっくりしたような顔つきでシェスターを見た。
するとシェスターは口角を上げてニヤリとアジオに対して笑みを浮かべていたのであった。
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