「……えっ!?どういうこと?……」
コメットがシェスターの話しをイマイチ飲み込めずにアジオへ問うた。
するとアジオは困ったような顔となり、天を仰いでしばらく考えた後、静かにゆっくりと説明をし始めた。
「……う~ん、そうだなあ……僕もはっきりと整理がついた訳じゃないんだけれども……あの少年魔導師はシュナイダー家の次期当主であり、それがために我々に接触してきた……ということですかね?」
アジオがシェスターに確認するように言った。
するとシェスターがフッと微かに笑みを零した。
「……まあそんなところだ」
シェスターは実際のところはかなり複雑な事情であったため、適当な相槌を打って事を済まそうとした。
するとアジオがそれとは気付かず、思わずシェスターの手に乗ってしまった。
「そんなところ、ときましたか……あっ!しまった!さっきの発言はなしです!なし!」
「うん?なんの話しだ?」
シェスターが思わず聞き返すと、アジオは慌てふためいて説明した。
「いや、そのう……御子息の……ガイウス君でしたっけ?彼が世界最強魔導師の触れ込みだったにも関わらず、すぐに消息不明になってしまったんで実際のところはどうだったのかなあ~なんてことをさっき言ってしまいましたけど、それはまあそのう……良く事情を知らなかったってことで、どうぞご内密に……」
アジオの語尾は最後消え入りそうであった。
「ああ、別にわたしもロデムルも気にしてはいない。そうだな?ロデムル」
シェスターが振り向き、ロデムルに水を向けると、ロデムルは微笑を浮かべながら無言でうなずいた。
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「な?もっともシュナイダー副長官や、当のガイウス君がどう思うかは判らんがね?」
シェスターが意地悪そうににやりと笑みを零しつつ言うと、アジオは恐縮しきったように頭を垂れた。
「いやいやいやいや……ですのでそこはどうぞご内密に……ということで……」
するとシェスターがさらに口角を上げ、さも楽しげに言った。
「冗談だ。冗談。気にするな。それよりもなぜガイウス君のことを突然話したのかといえば、彼の失踪がアルスたちの行方に大きく関わっていると思うからなのだ」
「それはまた、どういうことで?」
アジオの問いにシェスターは滔々とこれまでの経緯について詳しく説明した。
すると静かにシェスターの説明を聞いていたアジオが訝しそうに尋ねた。
「……ではその……オーガ神の究極魔法とやらのせいでガイウス君は消息を断つハメになったと?それに……」
アジオが少し言い淀んだところで、横からコメットが勢いよく割り込んできた。
「本当に猫王エルって実在するんですか!?」
あまりの勢いにさしものシェスターも気圧された。
「あ、ああ……実在する……いや、今はしていたと言うべきかもしれんが……」
するとコメットは聞いてか聞かずか上を見上げ、夢見る少女のようなキラキラした目となった。
「会いたいな~ぜひとも会ってみたいな~」
シェスターは少々気が抜けた顔となり、アジオと目を合わせて共に肩をすくめるのであった。
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