「……くっ!……貴公はどうやらわたくしを動揺させようとしているようだな?」
レノンが努めて冷静を装いながら言った。
だがシェスターはそれよりも遥かに冷静にレノンに対して静かに切り込んでいった。
「別段そんなつもりはないがね?そうではなく、貴公が勝手に動揺しているだけなのではないかな?」
「……そのようなこと……いや、そんなことはよい。どうでもよい。それよりも貴公はなぜわたくしをサディストと断じたのだ?それをはっきりと聞かせてもらおう」
するとシェスターがとぼけた表情を見せた。
「ほう?ずいぶんとこだわるじゃないか……そんなにサディストと呼ばれたくないのかね?どこから見てもサディストのくせに?」
「わたしはサディストなどではない。そのような性癖など未だかつて持ち得たことなどないわ」
「嘘を付け。貴公は紛れもなくサディストさ。これは断言できる。絶対だ」
シェスターは自信を持って、そう断言した。
するとレノンが怒りのためか、全身をワナワナと震えさせはじめた。
するとそれを見たシェスターが若干訝しそうな表情を浮かべた。
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「……どうやら本当にサディスト呼ばわりされることが嫌なようだな?なぜだ?貴公のような男ならなんと評されようと動揺したりはしなさそうだが……」
「……わたしは動揺などしてはいない……」
レノンが全身を震わせながら消え入りそうな声で言った。
シェスターはこれには大層訝しみ、眉根を寄せながらレノンの様子を細かく観察し始めたのだった。
(……これは予想外な反応だな……これほどまでに激烈な反応を示すとは……サディスト……たかがこんな言葉一つでどうだこの反応……これはもしやすると……)
シェスターはそこで一旦考えを打ち切ると、すぐさまレノンとのやり取りを再開した。
「ふむ。そこまでサディストと呼ばれるのが嫌なのであれば、この話は一旦やめて話を変えようではないか」
するとレノンがすかさず反応した。
「わたしは話しを変えろなどとは一言も言っていない。説明をしろと言っているのだ。なぜわたしがサディストなのか。その理由を説明してもらいたいと言っているだけだ」
レノンはあくまで文言にこだわり、そしてシェスターはそれを訝しんだ。
(……これは激烈だ……あまりにも激烈な反応だ……この反応の裏に、なにかあるのは間違いない。おそらくは……だが今はそれを確かめる術はない……とにかくまずはこの窮地を脱出せねば……なんとしてもここを脱出し、このレノンの反応の裏にあるものを調べなければ……)
シェスターは心中でそう決心し、今尚激烈な反応を見せるレノンを睨みつけるのであった。
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