「……ほう、判ったか。まあそうでもあろうな」
メノンティウスが得心したと言いたげな顔で呟いた。
「最終第八階層のさらに下の一段降りたところにいる者となれば……あの者しか考えられないからな……」
シェスターが目を細めて、いまだ底の見えぬ階下をにらみ据えながら言った。
そしてメノンティウスに向き直ると、自らの記憶の中にある地獄に関する情景描写を思い出しながら問うたのだった。
「確か地獄には、永久凍土の川があるはずだが?」
するとメノンティウスがゆっくりと静かにうなずいた。
「その通りだ。永久に溶けることのない氷の大河が確かにあるな」
「それは今もあるというわけだな?」
「あるな。あの大河は神によって氷結させられたものだ。地獄の他の場所とは違ってな」
「地獄の他の場所?そこも氷で固められたというのか?」
「そうだ。そもそも地獄は全ての階層が氷の世界だったのだ。それを長い年月をかけてゆっくりと溶かし、少しずつ街を作って発展させてきたのだが、それが可能だったのは、神ならぬ神の眷属たちによって行われたからなのだ」
「……つまり神のとは違い、神の眷属たちによって固められた氷は、悪魔たちによって溶かすことが可能だったというわけか?」
「そうだ。長い年月をかけてではあるがな。だがあの大河は神自身の手によって凍らせたものなのだ。故に今も溶かすことが出来ずにこの下に存在する……というわけだ」
「……なるほどな。地上に伝わる伝承とそう大差はないようだ。ならばその氷の大河に捕らわれし者の名も、おそらくは同じなのだろうな……」
シェスターが呟くように言うと、メノンティウスがやおら階下を指さした。
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「どうやら見えてきたようだぞ?」
シェスターはロンバルドと共に目を凝らして階下を覗き込んだ。
だが二人の目には、まだぼんやりとした漆黒の世界が見えているだけであった。
「……見えん……本当にもう近いのか?地獄の真の底は……」
「ああ、本当だ。後十分もすれば着くだろう」
「……そうか。そこにいるのだな?ガイウス君をこの世界に呼び戻すことの出来る者が……」
シェスターが傍らのロンバルドをちらりと見やり、苦衷に満ちた表情でもって言った。
だがメノンティウスはそんなことには全く関心を持たず、さも何事もないように言ったのだった。
「そうだ。そこな父親の命と引き替えにすることで、ガイウスをこの世界に呼び戻すことが可能となるのだ」
「くっ!それをわざわざ言わずとも良かろう!」
シェスターが怒りを表に出してメノンティウスに抗議した。
だがメノンティウスは何処吹く風と、相手にもしなかった。
「……それにしても久しぶりだ……ここまで来るのはいつ以来ぶりだったろうか……」
メノンティウスが懐かしそうに目を細めた。
するとその様子をシェスターが見るや、自らの怒りよりも沸き上がった好奇心が勝り、思わず問いが口をついて出たのだった。
「……会ったことがあるのか?あの者に……地獄の支配者にして永久凍土に捕らわれし者……あの悪魔王サタンに……」
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