「……では人間たちはわたくしが責任を持って守らせていただきます」
ドーブが実に低い、渋い声でもって言った。
「うむ。任せたぞ」
デルキアはもうすでにグラシャ=ラボラスに対して臨戦態勢に突入したのか、ドーブの言葉にも一切振り返らずに真正面を向きながら、気もそぞろな様子で言った。
すると傍らのカリンが、微動だにせずメノンティウスとにらみ合うアスタロトに対して言った。
「アスタロト様、グラシャ=ラボラスとシグナスはわたしたちが相手します。よろしいでしょうか?」
するとアスタロトが軽くうなずいた。
「ああ、よろしく頼むよカリン、デルキア」
アスタロトの言葉にカリンが猫なで声で答えた。
「はい!かしこまりました!」
カリンが嬉しそうに勢い込んで返事をすると、デルキアが口をへの字にひん曲げた。
「……猫なで声が気色悪いが、まあ仕方がない……では行くぞ!」
デルキアは言うなり、残像を残してフッと一瞬で消え失せた。
だが次の瞬間、シグナスの頭上にフワフワと漂うグラシャ=ラボラスの眼前へと突然現れた。
「食らえーーっ!」
デルキアは叫ぶなり、グラシャ=ラボラスの顔面を右腕で抉りこむように殴りつけた。
すると驚くべき事にグラシャ=ラボラスの巨体が、身体を回転させながら遙か遠くへと吹き飛んでいった。
「なんと!あの巨体を吹き飛ばした!!信じられん」
シェスターは驚き、思わず声を上げた。
するとドーブが低い穏やかな声でもって答えたのだった。
「……あれはただ殴ったように見せかけて、実は右腕を風の魔法で覆っておるのだ。そして抉りこむように打ったことでグラシャ=ラボラスの身体がねじれながら吹き飛んでいったというわけだ」
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ドーブの解説にシェスターが感心したように呟いた。
「なるほど、そういうことか……しかしそれにしてもあの小さな身体で……」
するとデルキアが突然鬼の形相で振り返った。
「だ~れ~が~……チビだと言うんだっ!!この人間め~!!ひと思いにぶっ殺してやろうかーーっ!!!」
デルキアの迫力にシェスターは思わずのけぞった。
すると傍らのドーブが小声でシェスターに遅まきの忠告をした。
「……デルキア様に小さいというのは禁句だ……」
するとドーブのささやき声をも地獄耳で捉えたデルキアが、さらに怒りの炎を燃やした。
「だ~か~ら~……誰が小さいんだっつってんだろうがーーーっ!!!」
すると、荒れ狂うデルキアに対し、カリンが冷静に言った。
「ちょっとあんた、奴が来るわよ?」
それに対してデルキアは、生返事で応じた。
「うん?ああ、うん?……何が?……」
デルキアは怒りで我を忘れていたため、すぐにはカリンの言葉の意味を飲み込めなかった。
そのためなんとなく首を振って正面を向くと、吹き飛ばしたはずのグラシャ=ラボラスが凄まじい勢いで自分目掛けて飛んでくるのが見えた。
「ぬわんとーーーー!」
デルキアが驚きの声を上げた時、グラシャ=ラボラスは眼前まで迫っていた。
だが次の瞬間、デルキアは間一髪フッと姿を消し去り、なんとか難を逃れたのだった。
「……あ……危なかった……」
デルキアは別の虚空に突如現れ出でると、どっと疲れたような顔をして反省するのであった。
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