「……貴方という人は……」
アスタロトはその美しい顔立ちに、悪魔的な陰を帯びさせながら深く嘆息した。
だがアスタロトはすぐに興味をなくしたといった素振りとなり、サタンから視線を外してメノンティウスへと移行した。
「……メノンティウス、一つ聞きたいことがあります」
メノンティウスは予想していたのか、涼しい顔で応答した。
「なにかな?」
「貴方の主目的はどちらなのですか?」
「どちらとは?」
「決まっているでしょう?ガイウスなのか、それともサタンなのかですよ」
するとメノンティウスがにやりと口角を上げた。
「どちらだと思うね?」
するとアスタロトが少々いらつき気味に答えた。
「もう問答は結構です!答えていただきたい。ガイウスか、それともサタンか、貴方が手に入れたいと願うのはどちらなのですか?」
するとそこですかさずサタンの横やりが入った。
「わたしを手に入れるだと?このわたしをか?そうなのかメノンティウス?」
サタンは嘲るように言った。
だが問われたメノンティウスは、今もなお涼しい顔のままであった。
そのためサタンの声には、突如として怒りが籠もった。
「どうなのだメノンティウス。答えよ。お前はこのわたしを配下にでもするつもりなのか?」
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するとようやくメノンティウスが口をゆっくりと開き始めた。
「……そうだな……まずはアスタロトの問いから答えるとしよう」
メノンティウスは空間が歪んだのではないかと思うほどに、目を吊り上げ、口角を上げ、輪郭をもひん曲げて言った。
「手に入れたいのは……どちらもだ。ガイウスも、サタンも、どちらもわたしは手に入れようと思っている」
すると突如、サタンの強烈な思念が二人を襲った。
そのためアスタロトは顔を歪め、両手で頭を抱えて悶絶した。
だがメノンティウスは……。
「……サタンよ。わたしに思念攻撃は通じん。いくらやってもただアスタロトのみが苦しむだけよ」
メノンティウスが、アスタロトのお株を奪うかの如き、涼しい顔で言い放った。
サタンは、そんなメノンティウスの涼しい顔を見て思念攻撃を諦めざるを得なかった。
そのため、ようやくアスタロトは痛みから解放されることとなった。
「……いい加減にしていただきたいですね……益々貴方の事が嫌いになりそうですよ……」
するとサタンがつまらなそうに言い放った。
「構わん。既にお前はわたしを最大限に嫌っておるのでな」
するとアスタロトがまだ軽くこめかみを押さえながら言った。
「まあ、それは間違っていませんがね……それよりもメノンティウス……」
アスタロトは、興味の対象をサタンからメノンティウスへと移して言ったのだった。
「では貴方のかねての算段とは、まずはサタンの力によってガイウスを呼び戻し、その後千年竜によってサタンを解放すると同時に……何らかの方法を使ってサタンを従わせるつもりだったということですね?」
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