1
「よし、では皆準備はいいか?」
シェスターの声かけに皆が一斉に応じた。
「では早速出発するとしよう。目的地はルーボス。かなりの長旅になるかと思うが、出来るだけ最短距離で行こうと思う。そのため、まずはアルターテ川を船で北上、内陸部に到達後、陸路西進し、カデナ山脈に辿り着いたところで、山脈を左手に見つつ再び北上し、目的地ルーボス到着までおよそ一ヶ月余りといったところか……」
するとアジオが合いの手を入れた。
「ええ、大体それくらいでしょうね。距離こそあるものの高低差はほとんどありませんからね。カデナ山脈も登る訳じゃなくて左手に見ながら麓をずーっと北上するだけですしね。一月もあれば……いや、やっぱり一ヶ月以上はかかるかな?……」
「うむ。まあかなりの長旅だ。無理せず進もう。別段一月を切ったところでどうなるというものでもないのでな」
「まあそうですね。では慌てず騒がずゆっくりと行きますか」
「ああ、そうしよう。皆それでは準備はいいな?出発するぞ?」
すると再び皆が一斉に応と返事をした。
シェスターは満足げにうなずくと、振り返りロデムルの顔を見た。
「では行ってくる。万事任せたぞ?」
ロデムルは右手を胸に当てつつ深々と礼をした。
「かしこまりました。どうぞお気をつけて……」
シェスターはうなずくと前方に向き直って言った。
「では出発!」
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シェスターは言うや勇躍と一歩を前へと踏み出した。
するとそれにアジオ、トラン、コメット、最後にバルトの順で続いた。
五人の長い旅の道のりは今、始まりを告げたのであった。
2
シェスター一行の乗る快速船は、因縁の地エスタを遙かに通り過ぎてより数日、ついに内陸への足掛かりとなるこぢんまりとした港町ラズッキへと辿り着いた。
「ふむ。小さいが中々に活気があるな」
シェスターが港で忙しく働く男たちを眺めながら言った。
するといつものようにアジオが相づちを打ったのであった。
「そうですね。まあいくらアルターテ川が大河とはいえ所詮は川に過ぎませんし、その上流の港ですからね。大型船が運航していないんで、どうしてもこぢんまりとした印象は拭えませんが、中型以下の貨物船による物資の運搬は中々に盛んなようです。それ故の賑わいといったところでしょうね」
「そうだな。君が言うように相当に貿易が盛んなようだな」
シェスターは港の作業員たちの物資搬入の様を楽しそうに眺めながら言った。
するとアジオが混ぜっ返すような感じでシェスターに突っ込んだ。
「貿易の雄たるヴァレンティン共和国の男としての血が騒いでいるようですね?」
するとシェスターが苦笑を浮かべつつ肩をすくめた。
「まあそんなところかな。どうしてもこういう雰囲気が好きなものでね。だがそうも言っていられないな。そろそろ日が暮れそうだ。今日の宿を探すとしよう」
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