するとメルバが一つ大きな吐息を漏らした。
「……やはりそうでしたか……いずれこういう日が訪れるだろうとは思っておりましたが、これはわたしの予想よりも幾分早かったですね……」
するとこのメルバの呟きにも似た言葉に、シェスターが反応した。
「ほう。予想をされておられたか。それはまた何故(なにゆえ)でしょうか?」
するとメルバが口元に笑みを湛えつつ答えた。
「教皇の動きです。以前、わたしのところに何度か彼の手の者と思われる賊が襲いに来たのですが……貴方方のところにも来たのではないですか?」
するとエルバが重々しくうなずいた。
「ええ、挨拶に見えられたわね。何度もね」
すると今度はコメットが続いた。
「……あの、僕のところにも来たみたいです……と言っても僕は気付かず、アジオたちが上手く退けてくれたもので……」
するとメルバがさらに笑みを深くしてコメットを見つめた。
「ああ、聞いているよ。だがこれまでのは、教皇も本気ではなかったと思っている。というのも人数も少なかったし、なにより賊の質が悪かった。だからわたしもだいぶ高をくくっていたものだったが、どうやら状況は変わったようだ……」
メルバはそう言うと笑顔から一変、表情を引き締めた。
「実は、つい先日のことなのですが、これまでと異なる大規模な
襲撃を受けたのです」
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このメルバの告白に、皆一様に驚きの声を上げた。
だがその中で一人、驚きながらも冷静さを保ったシェスターが鋭い眼差しでもってメルバを捉えながら問うた。
「この堅牢な館に?それはまたどれくらいの規模で?」
するとメルバが、ほのかな微笑を湛えながら答えた。
「いえ、襲撃は当館でのことではございません。わたしの別荘での出来事ですので」
すると一同が納得といった顔でうなずいた。
「高をくくっていたのがいけませんでした。わたしはさしたる警戒心もなく、別荘へ赴いてしまったのです」
「そしてその別荘で襲われた……おそらくそれまでの襲撃は、油断させるためのものだつたのでしょうな」
シェスターの分析に、メルバが大きくうなづいた。
「ええ、おそらくはそうでしょう。数も少なく、質も悪いこれまでの襲撃は、すべてこちらを油断させるための計略だつたのでしょうね」
「それで敵の数はいかほどで?」
「はい。その数およそ百数十。賊は組織だった動きで襲ってきました」
「それはまた……この館に比べて防御に薄いであろう別荘で、よくそれだけの数の敵を持ちこたえられましたね?」
するとメルバが再び微笑を漏らした。
「いえ、持ちこたえた訳ではありません。逃げたのです」
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