するとメルバが、今度は勿体つけることなく名乗り出た。
「ではわたしが……一応大学で歴史学を学んでいたので読めるかも知れません。ですのでちょっと前を開けてもらえますか?」
メルバの求めに応じてシェスターたちが道を開けた。
「……これは……相当古い時代の文字ですね……」
メルバは四角柱に書かれた古代文字を見るや、眉根を寄せた。
「……それに、所々すり減っていて……申し訳ない。これはどうやらわたしの手には負えないようです」
するとエルバが後ろから勝ち誇ったように言い放った。
「なにそれ~。自分から名乗りを上げておきながらあっさり諦めるだなんて!とんだ時間の無駄遣いだったわね?困ったものだわ~」
エルバが嫌みたっぷりに言った。
だがメルバは特に悪びれるでも、怒るでもなく、大人の余裕でもってエルバに対処したのであった。
「ああ、すまないな。ところでシェスターさん。貴方はどうです?読めませんか?」
するとシェスターが難しい顔のまま静かに答えた。
「……うむ。今試みているのだが……やはりすり減ってしまっているところがあるため、よくわからんな……」
するとそこでエルバが、先程メルバに対して嫌みを言ったことでスッキリしたのか、笑顔となって言ったのだった。
「でもいいじゃない。これが財宝であることはほぼ間違いないのだし。それに上には古代文字が得意な人がいるんじゃないの?」
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エルバが人差し指をピンと立て、天井を指さしながら言った。
シェスターは思わず苦笑し、人差し指で鼻を掻きながら言ったのだった。
「ああ、そうだったな。わたしとしたことが、彼の存在を忘れていたようだ」
「あら、ひどいわね。いくら彼の影が薄いからってそれはあんまりだわ。わたしはちゃんと憶えていたわよ?」
エルバがまたも腰に手を当て、勝ち誇ったように言い放った。
シェスターはさらなる苦笑を浮かべながら、アジオの方を振り向いたのだった。
「アジオ、すまないがグレンを呼んできてくれないか?」
するとアジオがニヤリと笑った。
「いいですよ。すぐに連れてきます」
アジオはくるっと振り向き、直ぐさま廊下を走っていった。
すると今度はメルバがシェスターへと話しかけた。
「……ところでこれ、何だと思いますか?」
シェスターは巨大な四角柱を真剣な眼差しでもって睨み付けつつ、呟くように言った。
「……ふうむ……見たところ大理石のような材質に見えるな。そして上面に文字となれば……石版……それも古代文明の残した石版と言うことになるのではないだろうか?……」
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