「……そうか。女か……間違いないんだな?」
するとガイウスが、少し考え込んでからゆっくりと口を開いた。
「……う~ん、まあ厳密に問われると、確かに女みたいな、なよっとした男はいるから断定は出来ないけど、でもまあたぶん女だと思うよ?まあ、たぶんだけどさ」
「ふむ、なるほどな。それであの石柱がイリスの棺であると確信したというわけだな?」
「そうだね。中に女らしき者が横たわっていて、なによりルキフェルがガード魔法を掛けていたんだから間違いないと思うよ?」
「確かにな。だが神は不死のはずだ。それなのに棺というのは、どうもな……」
するとガイウスが大いにうなずいた。
「そうなんだよ。そこが引っかかるんだけど、実はある仮説を立ててみたんだ」
「仮説?ふむ、聞こう」
ガイウスは、天上界の神々に実は序列があるのではないかという考えをカルラに伝えた。
するとカルラが非常に渋い表情となった。
「……ふむ、なるほどな。それならば神の死を説明出来んこともないか……」
「ああ、そうなんだ。ただ俺は最初、神は十二の人格を持つ多重人格であり、何らかの事情でその内の一人格を葬ったため、墓という名のモニュメントを残したのではと考えたんだけど……」
「ふむ。ならば棺の中に肉体が収められているわけがない。しかしお前は透視で見てしまったわけだな?」
「そうなんだよ。ただ、もしかしたら万能の神のことだし、肉体を何らかの手段で分裂させて収めたなんてこともありかな?と思ったんだけど……」
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「それは少し無理があるんじゃないか?」
するとガイウスが溜息混じりに肩をすくめた。
「だよねえ~。それ言っちゃったら何でもありだもんな~」
「うむ。だがお前の言ったように神は万能だからな……まったく有り得ない話しとして却下するべきでもないかもしれん……」
「……う~ん……」
するとガイウスが、ひどく深い考えに耽った。
「……やっぱり神って万能なのかな?……」
「何言ってんだい。お前がさっき自分で言ったんじゃないか」
カルラは鼻でせせら笑いながら言った。
「そりゃまあそうなんだけどさ……でもさあ、俺が知るルキフェルって、何ていうか、もの凄く人間くさい感じなんだよ」
「ほう……そうなのか?」
「うん。もの凄い嫌みったらしくて俺は大っ嫌いなんだけどね。何ていうか……神々しさとか全然ないんだよね」
「……ふむ。だが人間くささと万能かどうかは関係ないんじゃないか?」
するとガイウスがさらに深く考え込んでから、ゆっくりと静かに噛みしめるように自らの考えを吐露したのだった。
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