「……どうしたものか……」
カルミスは黒煙を吐き出す建物に張り付いたまま、しばし途方に暮れていた。
「……とりあえず安全なところへ避難するべきか……それともこのままここへ留まるか……いや、まてよ。二人の後を追ってわたしも突入するっていうのもあるな……」
カルミスはそう言うと、腕を組んで考え始めた。
そしてしばらくの間考えると、カルミスは首をブンブンと音が鳴るのではないかと思わせる程に勢いよく横に振ったのだった。
「ないないない!それはない!わたしは攻撃は苦手なのだ。わたしが行ったとて足手纏いになるだけのことだ。ここはとりあえず自重、自重……」
カルミスは自らに言い聞かせるように呟くと、首を振って辺りの様子をうかがった。
「よし。ここは一旦先程の草陰まで退却するとしよう。ここでは中から誰かが出てきた場合に鉢合わせになってしまうからな。よし!移動だ」
カルミスは言うや腰をかがめた姿勢のまま、建物から離れた。
そして外から見たら泥棒にしか見えないような足取りでもって先程までいた草陰へと後退したのだった。
「……ふう。とりあえずここなら安全だ。しばらくの間ここから見張っていることにしよう」
カルミスは草陰に完全に隠れるよう柔らかな土の上に座り込み、生垣の隙間からじっと黒煙が巻き上がる建物を見張った。
するとその時、建物へ向かって歩いてくる一団がカルミスの目に止まった。
「……あれはまさか!……レノン様か?……」
カルミスは目をようく凝らして一団を改めて見た。
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すると、やはりその先頭を歩く男は自らにとってかつての上司のレノンであった。
カルミスは驚き、慌てふためいた。
「どうするどうするどうする!?レノン様があの建物の中に……一体わたしはどうすれば良いのだ?……」
カルミスは草陰に埋もれるような態勢のまま、しばし頭を抱えて思い悩んだ。
「なんてことだ!これでは完全に袋の鼠ではないか!」
カルミスは吐き捨てるようにそう言うと、再度腕を組んで考え始めた。
「……だめだ!どう考えても二人とも捕まっているはずだ。やはりあの煙は罠だったのだ。それなのに……うううううううう……」
カルミスは小さな声で唸り出すと、自らの髪の毛を激しく両手で掻き毟った。
「ううううううううう……どうすればいいのだ!どうすれば……」
するとカルミスが突如髪を掻き毟る手を止めた。
「……待つしかない。ロデムルさんたちは今こちらに向かっているはずだ。それを待つしかあるまい」
カルミスはそう決断すると何度もうなずき、自分の考えが間違っていあにと自己肯定作業へと取り掛かった。
「そうさ。わたしが一人で飛び込んだところで何にも出来やしないんだ。仕方がないじゃないか。わたしは攻撃魔法は不得意なのだからな。そう!わたしの判断は正しい。ここで待つのが明らかに正しいのだ。それ以外にない。絶対にないのだ!」
こうしてカルミスは、自己肯定作業を終えると満足げに微笑んだのだった。
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