1
「よーし、それでは油断せずに一所懸命張り込むぞ!」
カルミスは気合を入れて今も煙がもくもくと立ち込める建物を睨んだ。
すると、突然建物から湧き出る煙の量が減り始めた。
カルミスは驚き目を凝らして注視すると、さらに煙の量は少なくなっていき、しばらくすると完全に煙は消えたのだった。
「……煙が……ということは……そうか!シュナイダー殿たちを捕らえたのだ。だから煙はもう不要だと……」
カルミスは煙が出なくなったことについての考察を終えると、途端に心配そうな表情を浮かべたのだった。
「……大丈夫かな二人とも……まさか拷問とかしないだろうな……いや、あるな。レノン様ならやっても不思議はない……大丈夫だろうか、心配だ……」
カルミスはとても心配そうな表情でもって建物を見つめた。
だが建物にはそれ以上何の変化も起こらなかった。
カルミスは再び両手を頭に持っていくと、またも激しく髪を掻き毟り始めた。
「ああああああああ……拷問されていたとしたら……どうしよう……助けに行かなくていいのだろうか?……いやいや何度言ったら判るんだわたしは!わたしなどが行ったところで捕まるだけだ。それならまったく意味がない!ここはとにかく待つんだ。仲間の到着を!ロデムルさんたちの到着を待つのだ!」
カルミスが力強くそう言うと、その肩をグッと誰かが突然力強く掴んだ。
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「大人しくしろ。逆らえば命はないぞ」
2
「……了解致しましたダルム様。お疲れでございましょう。しばしの間そちらのソファーにお掛けになってお休み下さい」
ロデムルは、ダルムからロンバルドたちが敵のアジト へ向かったことを聞くも、慌てず騒がずまずはダルムに休息を勧めたのだった。
「ああ、そうさせてもらいます。ずーっと走ってきたので、もうヘトヘトなんです……」
ダルムはそう言うとそそくさとソファーへと向かい、倒れ込むようにして座った。
「さてアジオ様、如何致しますか?」
ロデムルはソファーに倒れ込んだダルムを横目で見つつ、傍らのアジオに対して話しを向けた。
するとアジオは腕を組んで難しい顔をしながら、ロデムルの問いに対して慎重に答え始めた。
「……まだ人数は大して集まっていませんが、ここは行くしかないでしょうね……」
アジオの言う通り、隠れ家には今続々と仲間たちが帰還しつつあったものの、いまだその人数はロデムルたちを含めて十人足らずといったところであり、敵のアジトに突入するには多少心許ない人数であった。
しかもその中には小隊長クラスの者は一人もおらず、皆無役の者たちばかりであった。
しかしダルムから聞いた事情はかなり切迫したものがあり、人数が揃うのを待つような時間的な余裕はないとアジオは判断したのであった。
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