「ですがその前に、お二方ともどうぞそちらにお掛けになってください」
レノンは、かつて巨大なリビングルームの中央に有り、現在は部屋の隅の壁沿いに追いやられたソファーを手で指し示した。
するとロンバルドたちは、とりあえず大人しくソファーへと移動して座った。
「さて、言われたとおり座ったが、この後どうなるというのかな?」
シェスターの問いにレノンが微笑みを湛えて返答した。
「とりあえずお待ちいただきます。そして、その後出発を……」
「出発というのは、どこへなのかな?」
間髪を入れずのシェスターの質問であったが、レノンは軽く微笑むのみであり、答えようとする様子は微塵もなかった。
するとその時、レノンの片腕たるリボーがしたり顔を浮かべながら室内へと入ってきた。
「首尾はどうか?」
レノンの問いにリボーさらにしたり顔を強くした。
「この通りにございます」
リボーは腰を折り、頭を垂らしながら右手を差し出した。
するとそこには……
「竜の涙!!」
シェスターが思わず叫んだ通り、リボーの掌の上にはダルムが持っているはずの竜の涙が乗っていたのであった。
「それをどうしたのだ!?」
シェスターの問いにリボーが気色悪げににたっと笑いながら答えた。
「決まっているだろう。我が手の者がお前たちのアジトを急襲してダルムの手より奪い取ったものだ」
シェスターは予想していたとはいえ、実際に敵の口から状況を告げられると、苦衷の表情となり臍を噛んだ。
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「くっ!ダルムたちは……どうなった?」
するとリボーはさらに口角を上げて笑った。
「安心しろ。今のところは殺してはおらん。とはいえ今後についてはレノン様がお決めになることだがな」
「……おびき寄せるのではなく急襲するとは……」
「迎え撃つよりも油断しているであろうところを襲う。その方が我らにとって遙かに有利なのでな」
「くそっ!千年竜に竜の涙……改めて発動させるつもりか?レノン司教よ!」
するとレノンが大きく頭を垂れてうなずいた。
「もちろんですとも」
「……オーディーンを火の海にしようというのか?」
するとレノンが小首をかしげた。
「どうも誤解をされているようですね?なぜわたくしが、我が国の帝都を火の海にせねばならぬのですか?」
「……違うのか?ではなぜこのようなところで発動させようとするのだ?この上はオーディーンであろう?」
「ええ、この上はオーディーンにございます」
「……上ではない?……下か?……だが下といってもこの先は地底……一体どういうことだ?」
「今あなたが仰った通りですよ。我らが向かう先は地底……いえ、その先にございます」
シェスターはこれ以上ないくらいに眉根を寄せた。
「地底の先だと?……それは……」
するとレノンがこれ以上ないくらいに不気味に笑った。
「決まっているでしょう?地底の先は……地獄ですよ」
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